20170102-2

誰にもならないまま、

歳を重ねてしまった自分。

何かを成し遂げて、成し遂げなくても、

一角の存在になるのだ、と何処か思っていた。

自分の存在を認めさせてやる、と。

今も思っているのかもしれない。


記憶にある限り、私は大した労を重ねずとも、大抵の事をこなせた。

それは恥じの意識が人より少なかった事と、

衆目を集める事への抵抗もなかったせいだろう。

知らない事を知らないままにする事は難しかった。

出来ない事を出来ないままにする事も難しかった。

努力と言われる事は、楽しみでしかなかった。

変態なんだろう。


欲のままに生きてきた。

したくない事はしない。

したい事のための労は惜しまない。

それだけ。


人と交わる事が出来ない、と言うコンプレクスも

仕事と言う共通点さえあれば、意外と易く克服できた、ような気がする。

苦労していない訳ではないけれど、結局、喉元を過ぎてしまえば、全て血肉になるだけだ。

暴力に晒された記憶も、除け者にされた記憶も、手を払われた記憶も、

確かに私の中にあって、時々、間違ってチャネルを合わせたみたいに蘇るけど、

それも、ただ、映像として、残ってしまっているだけだ。


私は、これから、どう生きるんだろう。

住む場所と安定した収入源を得て、生きるための最低限のインフラを整えられた今、

私はとてつもなく困惑している。

私に危害を加える者のいない世界が手に入ろうとしていて、

それどころか、私を支援しようと言う他人さえいる。

とても戸惑っている。


私は、誰にもなれないまま、

私のまま、安全な場所に来れてしまった。

誰の事も傷付けず貶めず、見下す事も見下される事もなく、

静かで穏やかな場所に来れてしまった。

ここに来れるなんて思いもしなかった。

だから戸惑っている。

持て余している。

ここで、私はどう生きればいいだろう。

私は、自由を手に入れられた気がする。

それを持て余している。

戸惑っている。